Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

森健一 教授の講演「コンセプト創造の勧め」

東京理科大学 MOT 大学院 森健一 教授の「コンセプト創造の勧め」という講演を聴く機会があった。NHKプロジェクトX 挑戦者たち 第VI期 運命の最終テスト~ワープロ・日本語に挑んだ若者たち~ [DVD]」でも紹介されたように、森さんは日本語ワープロの開発を行い、それを商品のみならず「産業」までに育てた、つまり一つの産業をゼロから作った方である。そして僕にとっては、入社当時の研究所長であった。

今回の講演は、数々の新技術開発・新事業開拓を成功させてきた森さんの経験とノウハウを聞く貴重な機会であった。森さんが実践してきた「コンセプト創造」の具体的な方法が、いくつもの事例と共に説明された。つきつめると未来の顧客を定義して(誰がいつ何のために買うのか)、その「顧客の立場に立って」将来機能のブレストを行うこととなる。あるインタビュー記事にも、森さんの哲学が表れた記述がある:

「テーマ責任者、その上の部門責任者、さらにその上の所長、全社を受け持っている経営陣もみな研究開発リーダー。したがって経営陣が「もうかる仕事や研究を!」と部下たちに言うのは、まる投げしているだけで指示したことにならないのです。まずリーダーが自社の方向性を考え、市場を予測する。するとそこになくてはならないものが見えてくるはずです。その大きな方向と目標を明確にしたビジョンを持たねばならないと思います。」
これは今まさに自分に求められていることである。

森さんは、講演の最後を「夢を言葉に(コンセプト創造)、言葉を形に(革新技術開発)、形を事業に(新規事業開拓)、事業を産業に(新産業創出)」と締めくくられた。新しいものを生み出すことに対して強く熱い想いを持つ森さんの、後輩に対する応援メッセージである。

僕は、森さんに憧れて会社に入ったようなところがある。大学の学科に、森さんが OB として講演に来られた時には個別に話を聞きに行った。入社してからは、大学のみならず中学・高校も同じであることを知り、さらに親近感が増した。新人のときに「Prolog よりも Lisp の方がすごい」ことを主張して、森さんにたしなめられたことがある。

今でもよく覚えているのは、研究所の期初の方針説明で、たった 1枚のスライドで 1時間のプレゼンテーションをされたことである。「計算機の研究開発ではわれわれは後れを取った。未来を見据えて、次の世代を先回りするのだ。」と知的コンピューティングの世界観を熱く語られた。しゃべり出したら止まらない森さん。今回の講演も 2時間の予定ながら、それを 30分もオーバーした。当時と変わらず今なお精力的に行動される森さんから、新たな元気をもらった気がする。