旭屋書店の銀座店が閉店した。42年間この地で営業し続けた老舗の本屋である。銀座という便利な場所にあり、しかも関係会社のオフィスが同じビルにあることもあって、よく利用させてもらった。小さいながらも人文社会系の啓蒙書が比較的多く、店の奥にみすず書房と岩波書店のコーナーがあるのがユニークで、個人的に気に入っていた書店であるだけに残念だ。
旭屋書店といえば、道玄坂の麓にあった渋谷店（今のみずほ銀行、当時の第一勧銀の地下にあった）も数年前に閉店している。ここは渋谷で飲みに行くときなどの待ち合わせ場所として、学生時代からずっと愛用してきた本屋であった。理工系の専門書のコーナーを待ち合わせ場所にすると、人も少ないし、時間もつぶせて便利だったのである。特に待ち合わせていなくても、偶然友人に出くわすこともあったりして、それぞれのやり方で重宝していたのではないかと思う。
今や、インターネット書店で本を買い、待ち合わせ場所も決めずにケータイで合流する時代である。本屋はかつての本屋ではなくなりつつあるのだ。旭屋書店の閉店はその象徴なのだろう。思い出の場所がまた一つなくなってしまった。
