村上春樹のエッセイが好きだ。『村上朝日堂』シリーズのようにちょっと力の抜いた感じのものもよいが、『やがて哀しき外国語』や『走ることについて語るときに僕の語ること』のような真摯に世界と自分の生き方に向き合うエッセイを読むと自然と背筋が伸びる。
翻訳家としての盟友、柴田元幸のエッセイも楽しい。たとえば『生半可な学者―エッセイの小径』 は、英語や英語圏に住む人々を題材にしたエッセイだが、ご本人のユニークな体験とブレンドされて、とても愉快な読み物になっている。
二人とも日常生活・体験の中から、二人ならではのアイディアや思いを導き出し、しかもそれを楽しく伝える術を持っている。羨ましい。
柴田元幸の翻訳の定番、ポール・オースターの自伝的エッセイ 『トゥルー・ストーリーズ』も面白い。「事実は小説よりも奇なり。」このことばがそっくりそのままあてはまるポール・オースターの奇妙な人生。一読の価値あり。