Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

「私塾」の思い出 ― 故・澤田宏重先生の熱き思い

「私塾」ということばを聞いて、真っ先に思い出すのは、亡くなられた澤田宏重先生の顔である。白光学院というのがその塾の正式な名前であったが、僕たちは「澤田塾」と呼んでいた。中学・高校の約 3年間、澤田先生に英語を教えていただいた。授業では、英文法のエッセンスを凝縮した独自の薄いテキストを徹底的にやる。その演習・テストを繰り返す。中学 2年で中途入塾した時、出席した最初の授業で澤田先生が「have + もの + p.p.(過去分詞)」と大声で何度も繰り返されていたことを、今でも鮮明に覚えている。"I have my hair cut." の構文を熱心に教えておられたのだ。このようにして、英文法の基礎は澤田塾で叩き込まれたと言っても過言ではない。

他校の優秀な生徒たちと一緒に鍛えられることで、勉強の面白さ・厳しさを知り、努力を継続することの大切さと、それが報われることを学んだ。入塾した時は皆優秀な人ばかりでどうなることかと思ったが、余計なことを考えずに習ったことを復習して確実に身につけることで、何とかついていくことができた。幸い現役で大学に合格した時には、澤田先生より「おめでとう。どんなに努力しても一回で報われるとは限らないのが試験の怖さである。君が合格したのは努力の賜物でもあるが、自分の幸運とそれからご両親に感謝しなさい。」といった内容のお祝いのメッセージをいただいた。その葉書がどこに行ったかわからないのが残念でならない。

『私塾の心―この爽やかな真実』 は、澤田先生の教育者としての信念と情熱にあふれた本である。古い本なのでもう入手することはできないかもしれないが、「教育は人なり。」「そこに師あり。子弟自ら集まる。」「塾は勉強を通して人間を鍛えるところである。」「塾は私の天職である。そこに生徒たちがいる。私は私の持てるものすべてを惜しみなく彼らに与える。そして生徒たちはよりたくましく成長していく。これこそやり甲斐のある仕事である。」といった熱いメッセージが残されている。

ふと思い立ってインターネットを検索してみると、かつての澤田塾生で教育に携われている方のブログに行き当たった。澤田先生らしいエピソードが紹介されている。亡くなられて20年ほどたってもなお、澤田先生はそれぞれの生徒の心の中に生きており、影響を与え続けているのである。

その澤田塾は慶應義塾大学の裏にあるお寺、龍生院の境内の一角にあった。


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追記:2009.1.12

澤田塾の建物は取り壊され、空き地になっていた。