文庫化された三浦しをん『まほろ駅前多田便利軒』、森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』を、それぞれ一日で読了。森見登美彦は相変わらず京都を舞台にした「妄想系」「ストーカー系」ファンタジィである。『有頂天家族』と同様、独特の文体で幻想世界を紡ぎ出す。彼のエッセイ『美女と竹林』も、作者が友人と竹を切ることを題材にしたエッセイであるにもかかわず、虚実とりまぜ、現実と妄想の間を彷徨う物語になってしまっているのが、この作者らしい。
一方の三浦しをんだが、その卓越した文章力により作られる小説世界と、身の回りの出来事を描いたエッセイのギャップがはなはだしい。彼女のエッセイは実生活におけるオタクぶりを赤裸々に描いた爆笑もの。『しをんのしおり』、『人生激場』、『夢のような幸福』、『乙女なげやり』、いずれも電車の中で読む時には要注意である。
東野圭吾はあまりエッセイを出していないが、『さいえんす?』には、理系(メーカー)から文系(作家)の世界に転じた時に感じたギャップが率直につづられている。エンジニア出身で経営の一端を担う僕にとっても、共感するところが多いエッセイであった。彼のエッセイといえば『あの頃ぼくらはアホでした』も忘れるわけにはいかない。疾風怒濤・抱腹絶倒の青春記。