Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

進化論を学ぶ --- 『図説 種の起源』、『「進化」大全』、『マンガ「種の起源」』、ドーキンス『利己的な遺伝子』、グールド『ワンダルフ・ライフ』、『ドーキンス vs. グールド』、『進化と人間行動』

ダーウィン生誕200年(実はリンカーン生誕200年でもある)であった昨日の進化論に関するエントリの続き。

進化論をその成り立ち・歴史から包括的に紹介した本としては、『新版・図説 種の起源』『「進化」大全』『マンガ「種の起源」』 がおすすめである。特にカール・ジンマーの『「進化」大全』は図・写真が多く読み易い。

新版・図説 種の起源 「進化」大全 マンガ「種の起源」

読み物としてダントツに面白いのは、リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』ではないだろうか。「利己的な遺伝子(selfish gene)」という比喩、「遺伝子が自己複製して生き残るための、乗り物(vehecle)に過ぎない生物個体」というレトリックが、「結局のところ、遺伝子が個体の運命を決定づける」「個体は遺伝子に操られている乗り物である」という解釈につながり、ある意味衝撃的であった(ただし、この解釈は誤りである)。

このドーキンスと激しく論争を展開したのが、断続平衡説を展開した『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 』の著者、スティーブン・ジェイ・グールドである。

この論争を解説した『ドーキンス vs. グールド』は薄い本であるにもかかわらず、多数派であるドーキンスと、少数派であるグールドの論点の違いを明確化し、現代の進化論のダイジェストを知ることができる。

最新の進化論・進化生物学により、人間の行動や心理を説明するアプローチを示した本が、長谷川寿一・眞理子夫妻による『進化と人間行動』である。この本はドーキンスと同じ立場に立つ。進化は遺伝子の変化、もっと言えば集団の中における遺伝子頻度の変化ととらえ、進化のメカニズムは(偶然よりも)自然淘汰であるとする。なぜならば自然淘汰のみが適応を生みだせるからである(同書、pp.22-23)。

僕はこの本を読むことにより、ドーキンスの「利己的遺伝子」というレトリックの意味するところを、ようやく正しく理解できた気がしている。進化のメカニズムである淘汰の単位は、集団でもなく個体でもなく遺伝子である。生物の世界では、より生存率・繁殖率の高い遺伝子が集団中に広まる。「利己的遺伝子」はその複製の効率のよさを表す比喩に過ぎない。遺伝子は化学物質である DNA からできており意志は持たない。ドーキンスは、「遺伝子が進化の単位である」ことを繰り返し強調するために、集団の中で残り易い自己複製効率のよい遺伝子を「利己的」と称したが、この言い回しは遺伝子が意志を持つかのようで誤解を呼びやすい比喩であった(同書、pp.70-72)。

ダーウィン生誕200年、『種の起源』刊行150年を記念して、こういった本をもう一度読み直してみるのも一興かもしれない。

利己的な遺伝子 <増補新装版> ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF) ドーキンス vs. グールド (ちくま学芸文庫) 進化と人間行動