リビングに置いてあった先崎学八段の『フフフの歩』を何気なく手にとって読みだしたら、あまりに面白くて止まらなくなった。将棋界を形成する個性的な人々の様子が生き生きと描かれている。そしてその中にも勝負師としての厳しい生き様が浮かび上がってくる。この人は本当に棋士なのか、と思わせるぐらいの読ませる文章。さらに最近のエッセイ(『先崎学の浮いたり沈んだり』、『山手線内回りのゲリラ―先崎学の浮いたり沈んだり』など)ではさらに文章が洗練されて、そんじょそこらのエッセイストの著作よりずっと面白い。
この本がきっかけとなって、結局、先崎学八段と大崎善生の著作をまとめ読みしてしまった。夭逝した天才棋士・村山聖を描いた『聖(さとし)の青春』。奨励会という厳しい育成制度を舞台に繰り広げられる少年たちを温かく見守る『将棋の子』。いずれも胸を打つ。
大崎善生の『編集者T君の謎 将棋業界のゆかいな人びと』の後半は、心なしか奥様である高橋和(やまと)女流三段(ブログ「坊の母さん」)の話が多いような気がするのは気のせいだろうか。