「知の巨人」と言えば一昔前は立花隆であったが、今は佐藤優かもしれない。月300冊から500冊に目を通すという、その博覧強記のインテリジェンス能力・分析能力を支える知の技法をまとめた本が『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』である。佐藤優の知的活動の一端を知る格好の一冊であり、学習意欲も掻き立てられる。しかし同時に、そのパワーと立派さに圧倒されて、少々疲れてしまう本であるかもしれない。
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 単行本
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高度な専門知識を身に着けるために、まず必要とされるのは基礎知識。基礎知識は熟読によってしか身につけることはできない。しかし時間は限られている。熟読する本を絞り込むために速読が必要になる。
したがって自分にどの基礎知識が欠けているか、自己認識するところがスタートになる。大学センター入試で 8割取れれば基礎知識が身についている。そうでなければ高校の教科書・参考書から始めることになる。この本では、高校の世界史や日本史を例に、基礎知識を身につける勉強法が紹介される(歴史小説では歴史は学べない)。また数学や語学は体で覚える技術(テクネー)であり、計画的に時間を割く必要性を説く。
基本知識の習得により速読が可能となり、速読により読む必要のない本・箇所を外し、熟読すべき本を残す。まず 1冊 5分(!) の超速読(文字を読まない)により、4つの範疇に分類する:
- 熟読する必要があるもの
- 普通の速読の対象にして、読書ノートを作成するもの
- 普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
- 超速読にとどめるもの
普通の速読は 1冊30分から数時間で終え(もう二度と読まないという心構えで、文字を追う。1ページ15秒が理想)、「あの本のあの部分にこういうことが書かれていた」というインデックスを頭の中に整理して作っていく。速読したら、そのあと30分から1時間かけて読書ノートを作る。取り込んだ知識を自分の中に定着させるために(「どう知っているのか」という問いに答えられるために)、必要な抜き書きをしてそれに対するコメント(判断・意見)を残す。
本当に熟読すべき本を時間をかけて読む。月300冊のうち熟読するのは 4-5冊だという。熟読は未知のものを知る、学ぶための読書であり、基本知識を身につけるために奇数冊(3冊、5冊)選び、真ん中くらいのページ(ほんの一番弱いところ)を読んで、読む順番を決める。そして同じ本を 3回は読む。1回目は線を引くための通読(鉛筆で。後で不要な個所の線を消すため)、2回目はノート作成、3回目は再度の通読。
基本書を複数購入するというところは、立花隆の読書法とも共通するところである。限られた時間をどれだけ有効に使うか。そのためにどういう優先順位付けをするか。超速読・速読による選別方法は非常に参考になる。この本に書かれている超速読が、本当に自分にできるのか少々疑問ではあるが、今いつか読むつもりで買って積読している本の大群を、超速読で処理したらどうなるか。そもそも処理できるのか。それだけの基礎知識が僕にはあるのか。興味深いテーマである。
知の技法・思考法・読書法 エントリ
- 作者: 立花隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/03/19
- メディア: 新書
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