浮世絵は明治時代に廃れてしまったが、大正時代以降、浮世絵・錦絵と同じ技法で製作した版画を、「新版画」と呼ぶ。浮世絵と同様、絵師・彫師・摺師の分業により制作され、浮世絵の復興と近代化をめざした。「新版画」追求の中心となった一人が、版画家であり版元でもある渡邊庄三郎である。
2016年7月10日に放映された NHK 「日曜美術館」で、吉田博という画家の木版画を初めて知る。吉田博は、西洋画を学び、その水彩画・油彩画は米国での評価も高かった。しかし当時の日本の画壇の中心にいた黒田清輝の新派から、旧派というレッテルを貼られ、マジョリティから締め出されてしまった。そんな吉田博に、木版画という手法を教えたのが、渡邊庄三郎である。49歳にして木版画の道に入った吉田博は、彫師・摺師の職人技を短期間で習得し、自ら彫りも摺りも行う木版画家となった。
ねずみ版という陰影・ぼかしのための版木を使って、色を重ねていくことで、自然・風景を描いていく。「ホントにこれが版画?」と思わせる緻密で卓越した技法と配色。特に水と光の描写が素晴らしい。西洋画の手法が、木版画に応用され、一つの完成形の姿を示したと言えるのではないだろうか。日本の浮世絵が西洋の印象派に影響を与えた後、西洋画の手法が日本の木版画(新版画)に取り入れられたと言えるのかもしれない。
さっそく Amazon で『吉田博 全木版画集』の購入を試みるが、「一時的に在庫切れ;入荷時期は未定です」とのこと。NHK の媒体力はさすがである。
- 作者: 吉田博
- 出版社/メーカー: 阿部出版
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「新版画」で特に風景を描いたもの、その意味では、川瀬巴水(はすい)の版画も興味深い。『吉田博 全木版画集』と同じ出版社(阿部出版)から『川瀬巴水 木版画集』が出ているが、これもまた「一時的に在庫切れ;入荷時期は未定です」。僕と同様、「日曜美術館」の放送を機に、にわかに「新版画」に目覚めた人たちがいるようだ。
- 作者: 川瀬巴水
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- 発売日: 2009/05/01
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とりあえず Kindle で提供されている安価な画集を購入、川瀬巴水がどういう版画を描いている人か、手っ取り早く知ることができる。
- 作者: 川瀬巴水
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- 作者: 川瀬巴水
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川瀬巴水は国内よりも海外での評価が高いらしい。それは吉田博も同様で、その木版画をダイアナ妃も購入している。新版画についての情報は、渡邊木版美術画舗のサイトで種々紹介されている。ここは「新版画」を追求した渡邊庄三郎が創業した画商・版元なのである。
- 作者: 高木凛
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