自分がめざすべきは「ハンドファースト」インパクトのスイング、そのための理論的な根拠は、三觜喜一プロの「うねりスイング」にあると考えている。「左ハンドル」のバックスイングから、「パッシブトルク」のかかる切り返し、「右回り」のクラブの動き、ダウンスイングにおける左腕の「スピネーション」(回旋)により、「ハンドファースト」のインパクトを実現する。その時にキーとなるのが時間差を作るための「うねり」と称される身体の動きである。フェースターンや「右回り」のスイングなど、森守洋プロの教えとの共通点も多い。
最強インパクトを作る うねりスイング (世界基準のゴルフを身に付ける!)
- 作者:三觜 喜一
- 発売日: 2019/02/28
- メディア: 単行本
三觜プロは「うねりスイング」を「世界基準」のスイングであると謳っている。一方、オーストラリアでゴルフを教えている板橋繁プロが「世界標準」と称するスイング「G1 メソッド」をブルーバックスで紹介している。はてさて、その共通点は何で、違いは何だろうか?さまざまなプロの教えを俯瞰して比較してみると、同じ動作でもプロによってとらえるイメージ・感覚が違うことがわかる。さまざまなイメージ・感覚表現の中から、自分に合ったものを選び取っていくことが大切だと感じている。
世界標準のスイングが身につく科学的ゴルフ上達法 (ブルーバックス)
- 作者:板橋 繁
- 発売日: 2019/04/17
- メディア: 新書
- 作者:Knudson, George,Rubenstein, Lorne
- 発売日: 1988/05/21
- メディア: ハードカバー
「G1 メソッド」の原典は、ベン・ホーガンの唯一の弟子、ジョージ・ヌードソンの書いた『ナチュラル・ゴルフ』とのこと。日本のゴルフは「ガラパゴス化」しているという認識で、欧米流の「G1 メソッド」の要点をまとめると、次の 4つになる:
- 身体を柔らかく使って「身体のねじれ」を作る
- 身体のねじれ、捻転差のことを「X ファクター」と呼ぶ。
- 低く長くテイクバックする。
- ダウンスイングでクラブを倒し込みながら落下させる
- G1メソッドではこの動きを「裏面ダウン」と呼び、フェースの裏を地面に落下させる感覚で行う。
- クラブが身体に巻きつく感覚がわかると、それが本当のタメ。タメは勝手に作られるもので、意識的には作らない。
- クラブの重心を支点として「グリップとクラブヘッドの入れ替え」
- クラブヘッドは地面に近い位置を通って、ボールへの入射角がきわめて浅い「シャロースイング」、オンプレーンではない。
- グリップとクラブヘッドの位置を入れ替える身体のさばきによって、グリップはボールを追い越し、「ハンドファースト」の状態となる。
- 「まーるく振る」
- クラブヘッドを飛球線と平行に動かさず、つねに身体のまわりで円軌道を描いて動く。
- 「まーるく振った軌道上にあるボールを、クラブのフェースでかっさらう」イメージであり、「ボールを強くヒットする」「ヘッドを走らせる」意識はない。
このような「G1 メソッド」は、表現こそ違え、基本的なところでは、三觜プロの「うねりスイング」とよく似ている。例えば(「G1 メソッド」⇔「うねりスイング」):
- 「低く長く」クラブを引いて、ねじれ(Xファクター)を作るバックスイング ⇔ 「左ハンドル」を切るテークバック
- 切り返しでは左足のかかとを踏み込むと同時に、右ひざをターゲット方向に押し込んで(キックイン)、腰を回す ⇔ 切り返しでは骨盤を右に回すと同時に、左軸に乗って回転する
- 「裏面ダウン」でクラブを倒し込みながら落下させる ⇔ 切り返しでのパッシブトルク、「右ハンドル」の切り返し、クラブは右に旋回しながら下りてくる
このようなバックスイングから切り返しにかけての動きから、入射角の浅いシャローなスイングで身体の回転し続けることにより、ハンドファーストのインパクトを迎える。これが今の主流のスイングということなのだろう。
違うとしたらハーフウェイ・ダウンからフィニッシュにかけてだろうか。「G1 メソッド」では「まーるく回転する」という表現を使って、頭上から見た時の軌道を表し、「Y字インパクト」という表現で手を返さないスイングを強調する。それに対して「うねりスイング」では、直線的なスイングを謳っている。そして正面から見た時の形に注目して「L → I スイング」という表現で、左腕のスピネーションを強調する。手を返すか返さないか、フェースローテーションを強調するかしないか。ここが「うねりスイング」と「G1 メソッド」における表現の違いのポイントと感じる。
個人的には、この本の感覚表現にはいくつも参考になる点があった。特に最近「開眼?!」した切り返しでの感覚については、この本の表現がしっくりくることが多い。
- トップの位置は「左腕と地面が平行になったポジション」。実際のトップはグリップの運動方向が右から左に変わるポジションなので、もっと後になる。
- しかしそのトップはあえて意識せず、勝手にできるに任せる「ゼロトップ」
- 切り返しは三つの同時モーション:①左足かかとの踏み込み ②右ひざのキックイン ③クラブの倒れこみと落下からなり、クラブが自重で落下するスピードに合わせて、この三つを同調させる。
その一方で、ブルーバックスから発刊され、「科学的ゴルフ上達法」と称されながら、科学的でも論理的でもない記述が随所に見られるのは、とても残念だ。たとえば「99% の日本人は手を返す間違ったスイング」とか、「日本人は農耕民族だからクラブを振り下ろすが、欧米は狩猟民族だから身体のねじりで回転する」とか。また「世界標準」を強調し過ぎるのもどうかと思う。内容そのものは興味深いのに、こういった非論理的な記述があると、それが気になって、せっかくの中身が素直に頭の中に入ってこない。これは著者というよりは、編集者の問題という気がする。