Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

体重移動は「右→左」ではなく「右→左→右→左」?

本来ゴルフスイングは「身体で覚える」もので「感覚」を磨くものだと頭ではわかっているのだが、ついつい、なぜそうなるのか(why)、どうすればいいか(so what)を、「考えて」しまう。そして考えてアウトプットするためのインプット材料として、ゴルフの本や雑誌をよく読んでいる方だろう。結局、仕事でよくやっている課題解決の方法と、大して変わらないことを、ゴルフでもやっていることになる。もっと「感じろ」と、コーチには言われているのだけれども。

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さてここ数週間、「ヘッド・ビハインド・ザ・ボール」、そして「レベルブロー」のテーマに取り組む中、僕のコーチはちょっと面白いことを言っている。体重移動は、実は「右(バックスイング)→左(ダウンスイング)」ではなく、「右→左→右→左」だと言うのである。こんな意外なことを言われると、「感じる」どころか、つい「考えこんで」しまうことになる。

もちろん体重移動は、スイング動作の結果に過ぎない。それを意識してスイングすると、スエーなどのエラーを起こしかねない。今取り組んでいる「ヘッド・ビハインド・ザ・ボール」のスイングの結果として、コーチが言わんとしているのは「インパクト前からフォローにかけて、右に荷重がかかったように感じる瞬間がある」ということなのではないか?すなわち:

  1. バックスイング:右足荷重
  2. 切り返し:左足に荷重
  3. インパクトからフォロー:右足に荷重(結果的に左:右=50:50)
  4. フォロー以降フィニッシュ:左足荷重

ということである。

2. の切り返しでいったん左に踏み込むが、3. で再び右に戻るくらいのイメージ。「左→右」の単純なイメージだと、右に頭を残せず、上体が左に突っ込むエラーが起きやすい。そのための「右→左→右→左」のイメージをコーチは僕に伝えたのだろう。ただしこれも行き過ぎると、右に重心が残り過ぎた、いわゆる「明治の大砲」になる可能性がある。

僕の場合、特に切り返しで力が入ってしまうので、インパクト以降で振ることを口酸っぱく言われている。「右に頭を残して」「クラブをターゲット方向に放り投げるつもりで」と言うのが最近の言われ方だ。クラブヘッドと身体との引っ張り合いを感じられるよう、僕は砲丸投げのような身体の使い方をイメージしている。

その結果、確かにインパクトの前からフォローにかけて、右足に荷重する感覚はある。右足で地面を踏み、圧をかける感覚である。インパクト直前から両膝が伸びる中で、右にも重心が残っている感覚。インパクト時に 左:右=50:50 くらいだろうか。フルスイングする時はそう感じるが、正面から見てシャフトが4時くらいの位置でクラブを止めてみると、確かにいったん右に戻っているようにも感じる。なるほど、「右→左→右→左」はあながち嘘ではなかった。実際に重心がそのように動いているかはわからないが、少なくとも両足への荷重、および地面からの受ける反作用の力(地面反力)はこの感覚に近い。

この話で思い出すのは、田中秀道プロが「右、右、左」と言っていることである。「飛ばし」のコツとして「右サイドで打つ」ことを強調する:

  • テークバックの開始からフィニッシュの直前まで、できる限りボールより右側に体を置いてスイングしたい。
  • 「切り返しで左に踏み込み、インパクトでは左体重」という教えには否定的。左に乗る意識はゼロ。
  • ダウンスイングは「右足ベタ足」で OK。
  • スイングは、右、右、左。切り返し・ダウンスイングからフォローまでずっと右サイドに体を置いたままスイングする。
  • 右足軸で回転する明治の大砲ではなく、右足に重心を残したまま回転する。
  • フィニッシュは左足に完全に体重が乗る。結果的に体重移動は行われている。

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右サイドで打つとは言え、左足を軸にして回転することが前提である。僕が参照モデルとしている三觜義一プロの「うねりスイング」では、左足軸での回転を強調するが、同時にインパクトからフォローにかけて、「右に支点・頭が残ること、左サイドが伸び上がって右サイドが側屈すること」により、ヘッド・ビハインド・ザ・ボールとの両立を説明している。

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中井学プロは田中秀道プロの「右、右、左」をフォローアップする形で、右足ベタ足のインパクトについて説明している。次のインパクト直前からフォローにかけて右足を伸ばす動きが、今の僕のスイングに当てはまっているような気がする:

  • ダウンスイングの初期では、腰を左にスライドすると同時に、右ひざを曲げて右足の裏全体で押し込む。
  • インパクト直前からフォロースルーにかけて、右足のパワーを放出するイメージで右脚全体を真っ直ぐに伸ばす。
  • ダウンスイングの始動と同時に体重を左足に乗せようとしない。ダウンスイングからインパクトまではおヘソがまだ右を向いているイメージ。つまり右足重心のままでインパクトに向かう。
  • 「重心移動は、右、右、左」:バックスイングでは右足重心、ダウンスイングからインパクトまでも右足重心、ボールを打ち終えてからクラブヘッドの遠心力に引っ張られて、最後に左重心となる。

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スイングする時のイメージ、あるいは感覚としての「右→左→右→左」は理解できたが、実際のスイングではどうなっているのだろうか。"Golf Science" というゴルフにまつわる広範囲なテーマについて、科学的な説明をまとめた面白い本があるのだが、体重移動について、下記のようなデータが示されている。

Golf Science: Optimum performance from tee to green

Golf Science: Optimum performance from tee to green

この本によると、体重移動の技術には、大きく分けて Front-foot スタイルと、Reverse スタイルがある。Front-foot スタイルは従来からある「右→左」(右利きの場合)の体重移動であり、Reverse スタイルはダウンスイングの途中からフォロースルーにかけて、「右→左→右」と、もう一度体重を右に戻す技術である。

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スイング中の体重移動(赤:Front-foot スタイル、青:Reverse スタイル)、出典 "Golf Science"

上の図において、スイングの過程における前足(右利きの場合の左足)にかかる体重の割合の平均値が示されている。赤が従来からの「右→左」の Front-foot スタイル、青が「右→左→右」となる Reverse スタイルである。Front-foot スタイルでは、切り返しからインパクトにかけて 80% もの割合で前足(左足)に荷重し、その後もずっと左に荷重している。それに対して Reverse スタイルでは、切り返し以降、ダウンスイングの早い段階(ED:early downswing)で 67%、ダウンスイングの途中(MD: mid-downswing)で 59% と左足に荷重するものの、インパクト(BC: ball contact)では 42%、フォロースルー(MF: follow-through)では 40% と、左足よりもむしろ右足に荷重している。

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スイング中の地面への荷重(赤:左足、黒:右足)、出典 "Golf Science"

上のグラフは、スイング中の前足(右利きの場合の左足)と後ろ足(右足)からの地面に向かう力の変化を示している。上が平均的な Front-foot スタイルのグループであり、下が平均的な Reverse スタイルのグループである。Reverse スタイルでは、ダウンスイングの早い段階(ED)で、右足への荷重が始まり、インパクトからフォロースルーにかけては左足よりも右足に、地面に向かっての力が働いている。

以上、 "Golf Science" のデータに示されているように、Reverse スタイルと言われる技術の人たちの体重移動は、実際に「右→左→右→左」となっているのである。"Golf Science" では Front-foot がいいのか、Reverse がいいのか、ゴルファーは自分にフィットする方を探究することができる、としている。

つまり体重移動の技術には、「右→左」と「右→左→右→左」と二つのやり方があり、自分に合った方を選べるというのが結論である。田中秀道プロや中井学プロは、Reverse スタイルの体重移動を勧めていたと言う訳だ。僕の勝手な解釈だが、Reverse スタイルとは「右ベタ足」のことを指しているのではないかと思う。コーチが言っていた「右→左→右→左」は、単なるスイングのイメージ・感覚だけの話ではなかった。計測データが示すように、実際に「右→左→右→左」と体重は移動しているのであった。

補遺

実は話はもう少し複雑で、"Golf Science" では stack & tilt、日本語だと「左足一軸」打法の流儀があることに、言及している。バックスイングの際に右に乗らずに、両足の中心にいる感覚でバックスイングする流儀である。この流儀のデータは掲載されていない。