Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

Jacobs 3D によって「うねりスイング」の科学的裏づけは得られるのか?

テレビ神奈川で放映されていた三觜喜一プロの番組「The Golf(ザ・ゴルフ)」が、4月より「The Golf+(ザ・ゴルフ・プラス)」となって、いきなりレベルが上がった。今までは初心者を含むアベレージゴルファー向けの「細かすぎるレッスン」だったが、この 4月からは女子プロやその卵向けのレッスン(ツアープロレベルになるまで)となり、ラウンド中のさまざまなマネジメント、コース攻略の考え方も含む実戦的な技術内容になった。僕は YouTube でやっている MITSUHASHI TV のラウンドレッスン動画をよく観ているが、それをさらに掘り下げてくれるのではないかと、期待が高まる。

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そして何より面白そうなのは、ゴルフを科学的に解説する「ゴルフ・サイエンス」なるコーナーができたことだ。米国 PGA ティーチング・プロの Michael Jacobs が Steven Nesbit 博士と共同開発した Jacobs 3D という解析手法により、ゴルファーがグリップに与える力を 3次元で分析し、クラブをどうコントロールしているかが明らかになってきた。Jacobs 3D の日本アンバサダーとなっているマツモト・タスク(松本協)氏が、三觜プロと一緒に、正しいクラブの動かし方を説明していくようだ。三觜プロの「うねりスイング」が、物理学的にみて効率のよいスイングになっているのかどうかが、番組を通してわかってくるのではないだろうか。

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雑誌 GOLF TODAY 2020年5月号 に、Jacobs 3D について、アンバサダーであるマツモト・タスク氏監修によって 23ページもの特集が組まれており、その概要を知ることができる。Jacobs 3D によると、米国トッププロはクラブをグリップエンド方向に引き続けている。 日本の多くのプロや一般のアマチュアゴルファーの大半は、この動きができていないと言う。

スイングの肝は切り返しからハーフウェイダウン。米国のプロは切り返しにおいて、グリップに与える力は飛球線後方へ向かっている。そしてハーフウェイダウン(左腕が地面と平行)では、釣りのキャスティング・アーリーリリースのような動きが入る。その結果、クラブヘッドが描く円弧が飛球線後方へ極大化、ダウンスイングでヘッドが遠回りしてアタックアングルはシャローになる。ヘッドはその長い移動距離分のエネルギーを蓄え、シャローで長いインパクトゾーン確保しながらボールに向かう。その典型例として松山英樹ゲーリー・ウッドランドのスイングが紹介されている。

対して日本の多くのプレーヤーは、切り返し時点でシャフトに対して横方向の力をかけて、ヘッドをボールに向かわせている。インパクトまでグリップを直線的にボール方向へ引きつけている。外観的にはシャローイングと同じに見えるが、グリップ、そしてクラブにかかる力は米国のプロとは異なる。米国のプロは皆、クラブの重心コントロールを、スイング中にグリップを引き続けることによって実現している。米国の女子プロと日本の女子プロとのデータの違いは、スイングの効率に表れている。米国の女子プロは、日本の女子プロよりも小さいエネルギー・負荷でスイングを行っている。

ダウンスイングでグリップエンドをボールに向かわせない。切り返しで飛球線と反対方向にグリップエンドを引く。トップから右方向にクラブを振り出す。釣りのキャスティングのイメージで、竿の先端を振り出したら間髪を入れずに、再び引く。このクラブの使い方を教えているプロとして、記事には三觜プロが登場する。そして飛球線と逆方向にエネルギーを出す練習として、ボールを入れたカゴを使ったドリルや、右回りにクラブを使うためのアップターンドリルが紹介される。

このボールを入れたカゴを使ったドリルを紹介する映像がある。三觜プロの弟子である女子プロであっても、ボールをカゴから落とさない動きができる人(高木優奈プロ)とできない人(幡野夏生プロ)とがいることがわかる。胸は右向きのまま、右回りに体を使って、飛球線と逆方向にクラブを振り出す動きを覚えるドリルである。


ダウンスイングで正しい方向に力を出せていますか?【実は恐ろしいカゴ練の話】

アップターンドリルを紹介している映像もある。簡単そうに見えるが、三觜プロの愛弟子のティーチングプロでもうまく当たらない。胸郭リードによる切り返しができて初めて、ボールにしっかり当てられるようになる。


チーム三觜秘伝の「アップターンドリル」低い手元と前傾姿勢キープが実現できます!

要するに三觜プロの胸郭リードで右旋回する「うねりスイング」は、Jacobs 3D で明らかになった米国のプロたちのクラブの使い方を体現しているという訳だ。実は Jacobs 3D の日本アンバサダーのマツモト氏は、三觜プロの教え方に触れ(三觜プロの弟子に習ったそうだ)、初めてシャローアウトができ、クラブに仕事をさせる感じがわかったと言う。一方、三觜プロは当初はデータの裏づけがないまま「シャット → オープン → シャット」にクラブを右旋回させて打つこと、すなわち「フェースにぶつけに行くのではなく、フェースを閉じながら打ちこと」を教えていたが、今は Jacobs 3D の解析データが、選手たちに伝えることの裏づけになっていると語る。

Jacobs 3D によって、「うねりスイング」の科学的裏づけは得られるのか?「The Golf+」の今後の放送が楽しみである。そして日本アンバサダーであるマツモト・タスク氏が Jacobs 3D を紹介する本が近々出版される。これも読むのが楽しみだ。

よくゴルフ関連の読書のために参考にしているブログ Linkslover にて、Jacobs 3D の Michael Jacobs 氏による本の抄訳が行われている。原著を読む姿勢には頭が下がる。

まず 『Swing Tips You Should Forget』

golf103.hatenablog.com

そして『Elements of the Swing: Fundamental Edition』

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最新の『Science of the Golf Swing』についても、近々まとめてくれそうだ。楽しみである。

追記:2020.4.19

ブログ Linsklover にて、『Science of the Golf Swing』の要点がまとめられている。専門用語が多く、また独自の座標系を使っていることもあって、なかなか理解できそうもない。とは言え、一度はその内容について、キャッチアップしておきたいものだ。とりあえず明日出版される『ゴルフの力学』を入門書として読んでみようと思う。ゴルフ場に行けない今、本を読む時間はある。

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