Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

改訂されてわかり易くなった倉本昌弘『本番に強くなるゴルフ』:ざわつく心を抑え、感性を磨こう

倉本昌弘プロの書いた『本番に強くなるゴルフ』の令和改訂版が出版された。雑誌の連載記事をまとめた 2009年9月発刊の旧版を、時代に合わせて加筆・修正したそうである。

倉本昌弘『本番に強くなるゴルフ』(左:令和改訂版)

新旧 2冊を読み比べてみると、令和改訂版では、ポイントが整理されてわかり易くなっている。

練習と違ってコースで出てくる「ざわつく心」をどうやって抑えるか。そのための練習はどうあるべきか。これがメインテーマの本であるが、令和改訂版(新版)では、最初の序章で 5つのポイント(本番に強くなる 5つの心得)が提示され、続く章でそのポイントを詳しく解説する構成となっている。

また技術面では、感性を磨くことを強調している。旧版ではさまざまな状況における打ち方の説明があったが、令和改訂版では、ヒントという形でのみ示されている。スイングの正解は一つだけではない。自分に合ったスイングを見つけるためには、そのヒントをもとに自分で正解を見つけ出して欲しいという意図に基づいている。

令和改訂版で加筆されたのは、論理的に考え、確率を重視することである。その一方でプロ向けの技術・考え方については、新版では省かれている。全体のボリュームも旧版よりもよりコンパクトになっている。

旧版の内容についてメモをまとめたことがあるので、ここでは令和改訂版の 5つのメインポイントをもとに、新たに加筆修正されたところ、今の自分に響くところを中心にまとめておく。一部重複する内容もあるが、旧版のメモと併せて読めば、新旧両方の内容のエッセンスが掴めると思う。

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ゴルフの本質
  • ゴルフの本質は、自分でボールを操り、自分が狙った目標にボールを運んで、ひとつでも少ないスコアで上がること
    • スイングがよくなって、真っ直ぐの球を飛ばせるようになれば、スコアがよくなるとは限らない
  • コースでの「ざわつく心」と向き合い、自分の感性を磨きつつ、論理的に考え、確率の高い方法を選んでいく必要がある
本番に強くなるための5つの心得
  1. 常に心と向き合う
    • ミスを呼ぶのは不安・恐怖・欲といった「ざわつく心」
    • 心と向き合い、心が出てこない訓練をし、たとえ心が出てきても、狙った範囲に球を運ぶ手段・考え方を身につける
  2. いい球とは、狙った球筋で狙ったところに飛ぶ球である
    • 再現性の高い状態でいい球が打てるのがいいスイングである
  3. 狙った球筋で狙ったところに運べるスイングをめざす
    • 体の動きや形ではなく、感性に任せて、さまざまな球・距離を打ち分け、目標を狙う訓練が必要
  4. ショートゲームを磨く
    • 全ショットの中で比率の高いパットとアプローチを磨くことで、効率よく上達できる
  5. 常に論理的に考え、確率を重視する
    • 自分のショットの傾向やミスの傾向を知り、なるべくミスになりにくい方法を選ぶ
ざわつく心と向き合う
  • ざわつく心が出てこない訓練をする
    • 3球打ったら番手を変える
    • もしくは 3球ごと、1球ごとに狙いを変える
  • 心が出にくくなる回路を作る
    • 練習場で 30球はプレショットルーチンの練習をする
    • 構えたら 3秒で打つ
  • 強いゴルファーになる
    • 上手いだけではない、強いゴルファーは自分を信じる
    • 常にスイングを完結させる。フィニッシュをしっかりとる
      • フィニッシュが取れないのは「当てたい」「飛ばしたい」という心・感情に負けているから = 自分を信じていない
      • 「心が出てきても思ったことをやり切る」訓練であり、経験を積むことになる
  • 「~してはいけない」「~してはならない」という言葉はいらない
    • 心がざわついた時には、自信を持てる番手で打ち、自分が確実にやれることをやり、難しい時には許容範囲を広げて考える
    • 自分を責め過ぎない、心に刃を突き刺さない

以下は、心がざわつきやすい状況別の対応について。

  1. 人に見られている
    • 自信をもってできるまで「軽く打つ」練習をしておく
    • 「軽く打つ」とは、短く持つ、ゆっくり打つ、スタンスを狭める、小さな振り幅で打つなどの中から、自分のやりやすい方法を探り、練習する
  2. OB を打った後、3パットした後
    • 目の前の一打に集中する
      • 狙い・球筋・距離を考え、それに集中する
  3. パーやバーディが続いている
    • 現在に集中して、未来への思いを消す
  4. ライの悪いアプローチ、難しい状況
    • 「大体寄ればいいや」と思って打つ
    • 結果に対する許容範囲を広げ、想定内であればそれでよし
    • 無理をせず、自分が確実にできることをやって、最悪の結果を避けつつ、可能性を残す
  5. プレッシャーのかかるショートパット
    • 今やるべきことをやり切る
      • 過去や未来に思いを飛ばさない
  6. 苦手な距離が残る
    • 苦手な距離が残らないマネジメントをする
    • 苦手な距離が残ったら、4. と同じ。許容範囲を広げ、確実にできることをやる
  7. OB や池がある
    • 自信を持って打てるクラブ・番手でレイアップする
    • 「あの池を避けるためには、このクラブで、あそこを狙い、この距離を打つ」と、脳への命令を具体的に完結させる
自分にとって最高のスイングを手に入れる

この章に書かれているスイング技術、基本となるワンレバー・ツーレバースイング、体の動かし方などについては、旧版から表現は一部変えられているが、内容としては重複している(旧版のメモ 参照)。

新版で改めて追加・強調されているのは、自分にとっていいスイングをめざすこと、再現性を高めること、感性を磨くことである。

  • 人と同じスイングはできない
    • 自分にとって最も効率がよく、最もリズムとテンポが安定する、自分が思い描いた球筋で、狙ったところに運べるスイングこそが、自分にとって最高のスイング
  • 最高のスイングを手に入れるためには、再現性を高める必要がある
    • メトロノームを使って、同じテンポで打つ練習をする
    • 自分が最もスイングしやすい(得意なクラブで気持ちよく振る)テンポを探る(70~90 ビートが目安)
    • 3拍子のリズム:フォワードプレス、トップ、インパク
    • 本番で乱れた時も、頭の中でメトロノームの音をイメージすることで、リズムやテンポの修正がしやすくなる
  • 球を曲げて目標を狙う練習をする
    • 球を曲げるのはあくまで過程。思い描いた球筋で、狙ったところに球を運べるのが最終目標
  • 球の高さも打ち分ける
  • 大事なのは自分の感覚を磨き、自分にとって最高のスイングを手に入れること
    • いろいろなことを試す。いろいろなことに気づく。その気づきが大切
    • 球の曲げ方も自分で考えて試す
    • 一つの打ち方を教える、つまりマニュアルを渡すとそれが正解になってしまう
    • 人から与えられた答えを再現しようとしても、自分自身の感覚は決して磨かれない
  • できるできないは問題ではない。やろうとすること、やり続けること。それによって自分の感覚が磨かれ、ゴルフは自然に上手くなり、自然にいいスイングに近づいていく
スコアを作るアプローチ&バンカー

アプローチ、バンカーのショートゲームの上達は欠かせない。この基本技術については、旧版と同じ内容が説明されているが、旧版の方が詳しく、より高度な技術にも言及している。

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見たまま感じたままにパッティングする

「見たまま感じたままにパッティングする」ことは、旧版でも提唱されていた。新版では、芯でスクエアに打つこと、練習量を増やすことの重要性が強調されている。

  • ラインに対してフェースがスクエアな状態で、球を芯でとらえることが基本
    • 腕の力を抜き、腕とパターの重さを感じながら振れば、フェースは構えた時の向きのままインパクトに戻る
  • フェースはスクエアに戻ると信じ、しっかりストロークして芯を打ち抜く。その結果、フェースはスクエアな状態で当たる
    • この感覚を掴むには体の一部を意識するとよい:左手甲、左指先、右手のひら、右手首の内側など

倉本昌弘『本番に強くなるゴルフ』令和改訂版 P.156

論理的に考えて確率を重視する

この章は、令和改訂版で新たに書き加えられた内容である。

  • 割合の大きいショット、パッティングとアプローチの練習量を増やす
    • 練習場では、ドライバー・アイアン 3球に対して、アプローチ 7球
  • 練習場のボールでは距離感を養うのは難しい。その代わりにいろいろな球を打ち分けて「勘」を磨く
  • 得意な番手に時間をかけて練習して、上達の効率を上げる
    • 不得意な番手を打ちこなせるようになるまで練習してはいけない
      • 悪い癖・リズム・テンポ・力みなどを自分の体に染み込ませ、得意な番手も打てなくなる
  • ラウンドのデータを取って、自分の強み弱みを知る
  • データに基づき、自分のミスの傾向を明確にして、ラウンドに活かす
    • データを取るためのスコアカードの記入例:

倉本昌弘『本番に強くなるゴルフ』令和改訂版 P.195

  • ホールを 3~5 分割してその距離を打っていく練習をする
    • 多くの人が無理をしている。自分ができる以上のことを期待してプレーしている
    • スコアが 90以下の人であれば、パー5 は 4分割、パー4 は 3分割、パー3 は 2分割して攻める
      • ハーフだけでもその練習をしてみる
      • さまざまな番手で同じ距離を繰り返す練習が、コースの中でできる → 距離感が磨かれる
      • 飛ばすことがいいスコアを出す秘訣ではないことが体験できる → 無理をしなくなる
    • 大事なのは、打たなくてはいけない距離を打ち、狙った距離を残して、球を目標に近づけていくこと
    • 自分が得意な距離・不得意な距離がわかってきたら、得意な距離を残す練習をしてもよい
    • 無理をする(=グリーンに近づける)よりも無理をしない(=得意な距離を残す)方が、いいスコアにつながることが体でわかる

以上が令和改訂版のエッセンスである。倉本プロの率直な表現が心に響く。

最近、ゴルフスクールのコーチにも「頭で考え過ぎず、ゴルフの感性を磨くべしと言われており、この本の内容はそのヒントになる。

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倉本プロの本は僕にとってバイブルのようなもの。『本番に強くなるゴルフ』だけでなく、「90切り」「80切り」「平均85」のための教えについても、以下のエントリーでまとめており、ゴルフ場に行く電車の中で読み直している:

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一方で、コーチ曰く「倉本さんは天才ですよ!(僕たち)凡人に、天才の感性がそのまま当てはまるか、よく考えましょう。鵜呑みにしないように!」なるほど。それも一理ある。