Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

楠木建先生の経営エッセイ『経営センスの論理』

『ストーリーとしての競争戦略』(参考:再読のためのノート)の著者、楠木建教授(オフィシャルブログ)の経営にまつわるエッセイを新書にまとめた本が『経営センスの論理』である。もともとは日本版ハーバード・ビジネス・レビューのオンラインサイトに掲載されていた「楠木建の週刊10倍ツイート」「楠木建 ようするにこういうこと」の記事が元になっている。

経営センスの論理 (新潮新書)

経営センスの論理 (新潮新書)

先生の講演を一度聞いたことがあるが、話し上手で面白過ぎて、「経営漫談」を聞いているような気になってしまうところもあった。その話術も含めて、随所で先生の洞察力・論理、そして本書のテーマであるセンスが感じられる本となっている。

たとえばイノベーションについては、次のようなことを語っている:

  • イノベーションを成功させるためには、「(技術的に)できる」ことと、「(大多数の顧客がかならず)する」ことの違い、を理解しているのがアップル。
  • 非連続性を追求しているように見えるアップルだが、顧客がかならず「する」ことに対しては、非常に保守的であり、連続的である。
  • 取り組むべきは今そこにあるニーズ、将来出てくるであろうニーズではない。

取り上げられているのは、経営者、戦略、グローバル化、日本、よい会社、思考、といったテーマである。

  1. 経営者:
    • スキルではなくセンスの問題。センスは育てられない、育つ商売の場を与える。
    • 優れた経営者はハンズオン、事業・商売を自分事としてとらえている
    • 経営者に「〜せざるを得ない」と言われると脱力する。経営は自由意志。誰も頼んではいない。
  2. 戦略:
    • 分析ではなく綜合、「数字」よりも「筋」。
    • 戦略は外からは見えにくく、わかりにくい。
    • 新聞記事になるような要素(葉)ばかり見ていないで、それをつないだ木こそが戦略。自分の頭でじっくり考えないとわからない。
    • イノベーションの本質は非連続性。「次々にイノベーションを生み出そう」というかけ声はイノベーションを誤解している。
  3. グローバル化
    • グローバル化で直面するのは「言語」「多様性」「非連続性」という三つの壁
    • 経営とは商売をまるごと動かすこと。その意思と能力のある人でないとグローバル・オペレーションはできない。
  4. 日本:
    • 「日本の」ものづくりとか「日本的」経営とかヘンな話。戦略は個別企業の問題。
    • (とは言いながら)強い日本企業には専業度が高いという傾向がある。
    • つまりポートフォリオ経営に向いていない。ポートフォリオの本質は過去を忘れること。これが日本人はできない。
  5. よい会社:
  6. 思考:
    • 抽象と具体とを往復する思考様式が実践的。その振り幅・頻度・スピードが「地アタマの良さ」。
    • 情報をインプットする目的は二つ。一つはインプットそれ自体、もう一つはアウトプットを生むため。前者は「趣味」、後者は「仕事」。
    • 自分が達成したいアウトプットがあり、それが注意のフィルターになる。
    • 「ハッとする」論理の面白さがわかるようになれば、勉強は苦にならない。
    • インプットした時にいつもその背後にある論理を考えてみる。そのうちに論理の面白さを感じるようになる。面白がる力が鍵。

興味深く感じた要素や、個人的に耳が痛かった話をいくつか挙げてみたが、やっぱりこれだけでは本書の面白さは伝わらない。手っ取り早く、かいつまんでみてもダメなのだ。要素ではなく、それをつなぐストーリーが大切。これは戦略と同じということなのだろう。一度手に取って、その生き生きとした語り口を楽しんでもらえたら、と思う。

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