Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

社内起業家育成プログラム「始動 Next Innovator」からの学び

日本企業のオープン・イノベーションを支援する試みとして、経済産業省「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」を行っている。その一環で、2015年に実施した社内起業家をシリコンバレーに送り込む育成プログラム「始動:Next Innovator」から得られた学びと課題を議論するパネル討論を聴講した(2016年2月17日)。この試み自体も興味深いが、企業内イノベーションについて、日産自動車・志賀副会長(産業革新機構 CEO)の話が聴けたので紹介する。

パネラーは経産省・石井氏、メンター役となった日産自動車副会長・志賀氏、このプロジェクトの仕掛け人である WiL・伊佐山 CEO(2001年からシリコンバレーに在住)。 シリコンバレーを真似するのではなく、シリコンバレーに「出島」を作り、そこで新たな実験の場やオープンイノベーション機会を作り、事業を創り、Next Innovator としての人材を育成していくのがコンセプトである。

Wil 伊佐山 CEO、日産・志賀副会長によれば、イノベータ人材育成という点で、下記のような変化・成果があったという:

  • シリコンバレーで初日からこてんぱんに叩かれて別人のようになった。「退路を断っていない、チャレンジしない人間は組織の最下層」
  • そこで受けた刺激を社内に持ち帰り、新事業に抵抗するミドルマネジメント層の壁を打破しようとしている。
  • 選抜された日本の企業内起業家は、もともと非常に暑苦しいくらいの人材なのに意外とは内向き。今回、会社の外との人材のネットワークが形成された。
  • シリコンバレーという「メジャーリーグ」という世界を知り、comfort zone から出ることを肌で感じた。
  • 500人→120人→20人とシリコンバレーに行ける人を段階的に選抜することで、競争原理が働き、とがった人がさらにとがった(始動:シリコンバレー派遣メンバー(PDF))。
  • その中でも 5人は会社に戻ってから、社長と直談判してプロジェクトを実践している。

日産・志賀副会長は、自社ビジネスの危機感をもって、イノベーション経営に対する考えを述べたが、経営者の「心の岩盤」という話は傾聴に値する:

  • ハードウェア主体の自動車産業は日本が強かったが、これからはソフトウェアの時代。ネット接続、自動運転でシリコンバレーに負ける危機感を強く持っている。
  • 「すり合わせ」による品質維持という現場力が、日本の自動車メーカーの競争力の源泉であることは決して否定しない。しかしここに固執し続けると世界の進化のスピードに遅れをとる。
  • 社内起業・新事業には、既存事業の組織・業務、それを担うミドルマネジメント層との軋轢がある。また経営者にとって、短期業績 vs. 中長期戦略というせめぎあいもある。これらの課題を乗り越えるには、経営トップの新事業に対する理解と、真のコミットメントが不可欠である(新規事業室を作って、新事業をやっているポーズをしている経営トップがどれだけ多いことか)。
  • ノンコアをカーブアウトする、新規ベンチャーを買収するなど、事業ポートフォリオを「常に」ダイナミックに入れ替える経営が求められる。自前主義に陥りがちで、これができない日本の経営者の「心の岩盤」をどう崩すかが鍵。場合によってはガバナンスの力を借りることも必要になる。
  • せっかくシリコンバレーで刺激を受けた社内起業家が、既存事業のミドルマネジメントにつぶされないよう、サポートしていく。
  • 企業風土・カルチャーを変えなければならない。多様性を重んじ、異なる意見を受け入れる、とがった人が働ける環境・カルチャーが重要。

一時の経営危機から V 字回復し、新たな事業に挑戦する日産自動車の志賀副会長が、短期業績と中期戦略のバランス、新事業へのトップの強いコミットメント、異なる意見を受け入れるカルチャーという話をしていたのは、参考になった。

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