Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

「知のビッグバン」「知のマンダラ」へのガイドブック

以前教養書への読書ガイドとして紹介した『東大教師が新入生にすすめる本』の続編、『東大教師が新入生にすすめる本〈2〉』が出た。ざっと目を通して、さまざまな分野の入門書をチェックする。正・続2冊で紹介された本・著者の索引が最後にまとめて掲載されているのがいい。


東大教師が新入生にすすめる本 (文春新書) 東大教師が新入生にすすめる本〈2〉 (文春新書)

この本に、小宮山宏・前東大総長が次のようなまえがきを寄せている。こういう本の使い方を端的に表している文章だと思うので、少し長いが引用する。


昨今の学生を見ていると、目先の試験や課題をこなして成績を上げることばかり考え、高い目標を自分に課さない者たちが少なくないように見受けられる。同級生たちと横並びで勉強することに満足している傾向もある。これでは実につまらない。若い間に、自分の潜在能力を自分で見限ってしまうようなことは、愚かでとてももったいないことだ。まずは、愚直に難しい本にも取り組んで欲しい。ほんとうの学問、理論というものは、簡単に理解できるものではない。理解したつもりでいても、実はよく解っていないことも多い。学問とはそういうものだ。

大事なことは、よくわからないならば、わからない、ということをしっかり引き受けて、認めること。これが本物の知識への第一歩になる。簡単にわかった気にならない方がいい。解らないことは、べつに恥ずかしいことではない。ほんとうはよくわかっていないのに、解ったつもりになることの方が弊害は大きい。解ったような振りをすることの方がずっと恥ずかしい。実は、よく解らないところにこそ何か大きなものが潜んでいて、そこから新しい考え方が生まれてくることがある。学問の世界ではよくあることだ。
「書物の知の自律分散協調系」(『東大教師が新入生にすすめる本〈2〉』)


… 現在の学問は、知識の爆発的増大に直面している。… この知識のビッグバンは、宇宙のビッグバンと同じように、最初の混沌状態から、構造化されていかなければならない。これが二十一世紀の大きな課題だ。… 現代求められている知識の構造化は、固定した学問体系を作り上げることとは違う。爆発しつつある知は、たえず構造の組み替え、流動化を求めている。遺伝子に関する知の爆発は、医学も生物学も農学も、さらに材料科学や情報科学のありようも大きく変えている。人間とは何かを考える哲学や倫理学の分野にも、大変革をもたらしているはずだ。今後も、新しい知の爆発がいろいろなところで起こるだろう。新しいフロントが次々に開かれる。学問知識が生かされる場である現実社会からも、次々に難問課題が突きつけられて来ている。それを受けて立つところから、新たな知が展開していく。知識のマンダラは知の閉鎖体系ではなく、動きつつある開放体系なのだ。この、知識の開かれた構造を、私は「自律分散協調系」という言い方で捉えている。
「書物の知の自律分散協調系」(『東大教師が新入生にすすめる本〈2〉』)


これから、現代の知のビッグバンのただ中に入っていこうとしている若い読者には、だから、とりあえずは自分が引きつけられる切り口を、この本のどこかに見つけてもらいたい。巨大な現代の知のマンダラへの、百余りの入り口が、この本の中に並んでいると思ってもらいたい。そのどれかの中に、いや、一つでなくてもいいだろう、ともかくどこかから、臆することなく入り込んでいって、複雑なネットワークの中を歩み出してほしい。そしてときに道に踏み迷ったら、また視点を広くとって、たとえばこの本を、自分の現在位置を教えるナビゲーションとして使ってみることだ。そんな読み方をされた時、この本の最良の使命が果たされたことになるだろう。
「書物の知の自律分散協調系」(『東大教師が新入生にすすめる本〈2〉』)