切り返しで腕を真下に下ろすと、ヘッドが走る。球が捉まって飛ぶようになり、新たな驚き・発見があった。そのことについて、自分なりに Jacobs 3D の視点で解釈してみたい。
僕の切り返しのエラーは、クラブを引っ張る方向が違うことにあった。自分ではグリップ・エンドの方向に γ フォースで引いているつもりだったが、上体が左に回転することにより、シャフトの横方向に β フォースがかかり、その結果、シャフトのローテーションが起こって、ヘッドが遅れていた。これはシャフト縦方向、α軸を中心とした α ローテーションである。これを抑えるべく、その逆方向の α トルクでマッチアップを行っていた。そのため、右手人差し指（の肉球）でグリップを押しながら、インパクトに向かっていた。ある意味、典型的なアマチュアゴルファーのミスである。
その矯正のために、左手で地面に向かって真下にグリップを引く。こうすると左手力点・右手支点のテコにより、シャフトが立つように動いて、ヘッドが前に出てくる。これが僕なりの Jacobs 3D 的解釈である。
Jacobs 3D といえば松本協（タスク）プロの TASKGOLF である。彼もアマチュアゴルファーに対しては「腕を真下に下ろす」指導をしているので、その動画を見てみよう：
この動画の最初で、βフォースでクラブを押す大半のアマチュアには、まず「腕を真下に下ろす」指導をすると言っている。その方が、体が開かず上体が残り、クラブを引けるようになるからだ。これはまさに今の僕のレベルと言ってよいだろう。
しかし既にクラブを押さずに引っ張ることができるプロやトップアマに対しては、次の段階のアドバイスをすると言う。プロやトップアマは重心管理されたバックスイングの結果、切り返しでグリップ・エンドが正しい方向を向く。したがって真下ではなく、グリップ・エンド方向にキャストして引っ張る（γフォースで引っぱる）と指導するとのこと。
この動画の後半では、体の右斜め前に置いたインパクト・バッグに、クラブヘッドを落とす練習が紹介される。上級者になると、右斜め前、ある意味飛球線と逆方向にキャストすることになる。この時、TASK さんは「餅つき」というたとえを使って、ヘッドを落とす際のキャスティング（γフォース ＋ 若干の上向きの αフォース）と、アーリーリリース（手首をほどく βトルクにより、クラブを回転させる）の違いを説明している。
なるほど！
ただ体の右サイド、どちらかというと飛球線とは逆方向にグリップを引っ張って、クラブをキャストするのは、残念ながら今の僕のレベルでは難し過ぎる。まずは「腕を真下に下ろす」ことにフォーカスして練習しよう。バックスイングが矯正され、グリップが正しい方向を向くようになれば、キャスティングを学ぶ段階に入るのだろう。
さて、腕の振り方について、もう少し Jacobs 3D で解析された力学の世界を深掘りしてみよう。ゴルフスクールの新コーチには、左腕全体でのバックスイングと、右肘をコントロールタワーにした右腕の振り方を教わっている。
左腕を意識してバックスイング、左手を真下に下ろす切り返し、右肘を意識したダウンスイング。この一連の動きの中では、左手でクラブを引っ張りつつも、インパクトでは右手で押す感覚がある。ダウンスイングでは左手で引っ張って（γフォース）、インパクトでは右手で押す（βフォース）。この感覚は正しいのだろうか？
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この疑問に答えてくれるのが、次の動画である。「腕の振り方」について、どのタイミングでどのフォースが出ているのか、Jacobs 3D のデータを示しながら、詳しく解説している：
TASK さんによる解説が明解でわかり易い。僕にとっては、ある意味、「神回」と言ってもいい動画だと感じた。
- エネルギー目線（Jacobs 3D のデータ）での正解：
- まず左手でグリップ・エンドを引っ張って（γフォース）、最後は右手で押す（βフォース）
- 左手＋体幹で引っ張るエネルギーの方が強大で、右手はついていくだけ
- ただし人間の感覚表現としては、人それぞれ：
- 左手で引っ張ると言う人もいれば、右手で引っ張るという人もいる（したがって参考にしかならない）
- TASK さんは「右手で引っ張っている」感覚だという（エネルギー目線では「左手で引っ張る」だが…）
- 左腕の振り子：
- 右腕
- 右腕を振ることでエネルギーを与えられるが、左腕（＋体幹）による引っ張るエネルギーの方が強大
- 正しいエネルギーを与えた時に、右肘は必ず下を向いて、真下に下りてくる
- 右手は叩くのではなく、お腹の前に来た右肘で下向きに押し込む動き
- 胸郭の旋回により、右手に力が加わる
- 「右手でテーブルを拭く」イメージ
- これもショルダーパッキングが前提
Jacobs 3D の解析をふまえると：
- アマチュアはまず「左で引っ張る」ことを学ぶ
- 上級者になったら「右手の使い方」や「左足のクローにより胸郭を回す動き」を学ぶ
この動画が凄いのは、Jacobs 3D のデータを見せることで、TASK さんの言語表現の内容を明確にしてくれることだ。その Jacobs 3D のデータを一部、引用する。
上図は米国トッププロの γフォース。切り返し以降、常に γフォースでグリップを引っ張り続けている。
トッププロは、P6 のデリバリーポジションから、クラブを押す βフォースが観測される。右手だけでエネルギーを与えているのではない。胸郭の旋回の結果、右手で押している。TASK さんが「右手でテーブルを拭くように」と例えている動きである。
ちなみに切り返しで緑（逆方向）のβフォースが観測されているが、これは無意識の自然落下によるものである（昔、パッシブトルクと言われていたクラブの「右回り」特性であろう）。
上図はアマチュアゴルファーの βフォース。トッププロが P6 からクラブを押すのに対し、アマチュアは切り返しの段階から βフォースでクラブを押している。僕もこの典型的なアマチュアの一人だと言える。特にバックスイングで「手上げ」をしているので、切り返し直後から βフォースでクラブを押しがちになる。
さらに最新の Jacobs 3D では、グリップにかかるエネルギーだけでなく、スイング中、体のどの部分のエネルギーがクラブヘッドに伝わっているかも、バルーンで可視化する。P5 - P6 - P7 の動きが以下となる：
- P4 - P5：体幹・胸郭のエネルギーが、左のリードアームに伝わり、前腕（フォアアーム）に伝わる
- P6 - P7：右の前腕エネルギーが出て、胸郭の旋回エネルギーと一緒に、右サイドのエネルギーとして観測される
- 右の肘がボディーの横に入って下へ押していく、テーブルを拭くようなアクションに相当する
- 足について直接寄与するのは、ダウンスイングでの左足のクローの動きである
- 左足を後ろに引くクローの動きに寄り、胸郭（体幹）がグンと旋回する
この分析結果をもとに、TASK さんは「世の中では地面反力・床反力と言っているが、結局は上半身のエネルギー」と言い切っている。
今現在ちょうど僕が習得しようとしている技術、すなわち：
という腕の使い方について、この動画によって Jacobs 3D という科学的なデータ分析の裏付けが得られたことになる。個人的にも非常に合点がいったし、裏付けがあるので安心して練習できる。また5年前に読んだ Jacobs 3D解説書の理解を深めることができた。
その意味でも僕にとって、TASKGOLF の「神回」動画の一つと位置づけられるだろう。
以下は蛇足である：
まず地面反力について。左足の踏み込みにより体の回転の推進力を得る動きだと言われている。これが TASK さんのいう「左足のクロー」に相当するのではないだろうか？そしてこれは今、僕が習っている左足の踏み込み・左膝の動きにも通じそうだ。
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次に正しいリリースのタイミングについて。1年前、"Golf Science" という本を読み、「ヘッドを走らせる」ためには、P5 まで手首の角度を維持して、P6 までに能動的にリリースすると学んでいた。
この時のブログを読み直すと、前のゴルフスクールのコーチにも「球を捉まえるならば、リリースタイミングはもっと早く！」「もっと前。ハーフウェイダウンより前！」と言われていたことを思い出した。
要するに、P4 から P5 にかけて、（一般アマチュアにとっては）腕を真下に下ろすこと、（上級者にとっては）クラブをキャストすることが、正しいリリースになるということだ。
5年前に読んだ Jacobs 3D の知識、1年前に "Golf Science" で学んだ知識。当時ゴルフスクールで習っていたこと、そして現在習得中の技術。今回の TASKGOLF の動画により、すべてがつながった。僕にとって「神回」たる所以である。
