Muranaga's Golf

46歳でゴルフを始めて10数年。シニアゴルファーが上達をめざして苦労する日々をつづります

水村美苗『本格小説』

友人から紹介された水村美苗の『本格小説』(上巻下巻)を、週末に一気に読んでしまった。1,000ページものボリュームのある作品だが、文句なしに面白い。

本格小説〈上〉 本格小説〈下〉

最初は作者と同じ名前の語り手による「私小説」の形式で始まるが、語り手を次々に変えながら、本格的な恋愛小説に突入していく構成となっており、どんどん引き込まれていく。最後にちょっとだけトリックが用意されているのもスパイスが効いている。

昭和初期の上流階級の没落(これには広い意味で作者自身の家庭、この時期に海外企業で活躍していた父親たちも含まれるだろう)を描いているが、その時代の流れの中で顔を失ってしまった日本人たち、存在が希薄になってしまった日本への批判が少しだけ顔をのぞかせている。

作者の見事な日本語の文章に導かれて、静かで深い読後感の得られる「本格小説」であった。いつもよい本を紹介してくれる友人に感謝。