「大概のアマチュアはシャローイングができない」と言う井上透プロコーチ。その『ゴルフ 90 を切る「素振りトレ」』を読む。素振りを基本としたスイングの身につけ方、ショートゲーム、メンタルについて書かれた本だ。凄くシンプルなことが書かれている。読み飛ばしてしまいそうなくらいシンプルだけど、よく読むと、アスリート志向で味わい深い本である。至極まっとうな教えであり、この本を読むと真摯に練習に取り組みたくなる。
最強プロコーチが教える ゴルフ 90を切る「素振りトレ」 (青春新書プレイブックス)
- 作者:井上 透
- 発売日: 2018/04/21
- メディア: 新書
たとえば次のような言葉が心に響く。
- 正しい軌道を素振りで身につけよ。正しい軌道のスイングは綺麗なスイングでもある。綺麗なスイングでなければ、いずれ伸び悩む。
- ひたすら地面の同じ場所を擦ること。それを全番手でやれるようにすること。
- 素振りで正しいスイング軌道が身についたら、次の段階。ボールを打ってフェースコントロール、安定した打点を身につけよ。
- 芯に当てよう。いいスイングをすれば芯に当たるのではない。「芯に当てる努力をしてつくり上げたものがいいスイング」なのである。
- アプローチは「ただ打て。とにかく打て」
- 頭で考えて動いても、アプローチの「勘」は磨かれない。めちゃくちゃたくさん球を打つ。無意識のうちに調整する力が養われる。
自分の苦手なこと・欠点を把握すること。それを中心に練習することを説く。たとえば、まずインパクトシールで打点の傾向を知ること、ショートパットの苦手なラインを知ること。その上でそれを克服する練習をしていく。あたりまえだけど、質の高い練習の本質をついている。
この本の基本的な考え方は次の通り:
同じ1万時間の練習でも質の高い努力をしたい。そのためには「質のいいスイング」を身につける必要がある。それに必要なのが「素振り」。「素振り美人」になることが重要。
- 素振りで大事なのは形(見た目)、リズム、いい軌道で振れること。
- 韓国の女子プロを真似るのがオススメ。
- 上達が早い人は次のようなことを実施している:
- 自分のレベルを正しく認識する。
- ミスを正しく反省する。
- ラウンド後その日のうちに練習ないし復習する。
- 反省すべきはスコアではなくショット(ミスの傾向)。
- その日の調子に対する調整力がある(安定を求めない)。
- 正しいポジションに固執せず、自由な選択・試行錯誤ができる。
- アプローチとパットの練習が多い。
- 質のいいスイングの三つの条件
- 正しい軌道で振れる
- フェース向きを管理できる
- 打点が安定している(芯で打つ)
- 1.は素振りだけで身につけられる。2.3.は打点に関する経験・勘が必要で、球を打って磨く。1. を身につけてから 2.3.に進むべし。
ここまでが、この本の基本的な考え方である。その質の高い練習の中身について、以下にまとめておく:
正しい軌道
- 正しい軌道を身につける素振りトレーニング
- ヘッド2-3個の幅でスティックを2本平行に置く
- 2本のスティックに当たらないように素振り
- 地面(マット)を薄く擦る
- ドライバーからウェッジまで
- アイアンは自分のセンター(鼻の下)より左側を擦る
- ヘッドが右に落ちているのはダフっている証拠:
- 右足に体重が残っている、アッパーに振ろうとしている、アーリーリリースなどが原因
- ヘッドが左に落ちる場合:
- 体重が左にかかり過ぎている、上から入れ過ぎている、リリースが遅いなどが原因
- ヘッドが右に落ちているのはダフっている証拠:
- 正面からスマホ画像でチェック
- バックスイングで右腰がアドレスのライン通りに回転する
- 頭:左右の動きはウェッジでほぼゼロ、ドライバーなら頭半分まで
- 頭:上下動はほぼゼロ
- ハーフウェイダウンで、左腕とクラブの角度が90度以下(それ以上だとアーリーリリース)
- フィニッシュでバランスよく 3秒以上立てる
- 飛球線後方からのチェック
- フェース向き:
*トップで 45-60度空を向いている。
- ダウン(ヘッドが腰の高さ)ではトゥが真上を向いているか、前傾した背骨と平行
- 軌道:
- ダウンとフォローで軌道が同じ
- シャフトが右肩より低い位置を通って下りてくる
- ドリル:ゴムホースドリルの連続素振り。トップとフォローで肩に当たるように。
- 前傾角度のキープ:
- アドレス時の「左腕とクラブが作る手首の角度」をキープしてインパクト
- バックスイングでのコッキングが不可欠 *ドリル:アドレスした状態から手元を動かさずに、コックして90度の角度を作る。この手首の角度をキープしたまま、バックスイングして、そのまま素振り。
- フェース向き:
*トップで 45-60度空を向いている。
フェースの管理
- インパクト時のフェースの向きをチェック
- 真っ直ぐ振って右に出るなら開いている
- 左に出るなら被っている
- インパクトバッグを叩いて、フェースが開く動きを直す
- ヘッドを何かに押し付けて、ハンドファーストの形を作るだけでも同様の効果あり
- ハンドファースト:
- 切り返しにて、左手首が自然にしなり、手のひら側に折れた(ヒンジ)形で下りてくる
- ヘッドが手元より遅れ、手元がヘッドより 10cm ほど先行するハンドファーストとなる
- 手首をしならせられない人は、左手をフックグリップにする
- 手元を支点にクラブをぐるぐる右回りに回転させる
- 手首を柔らかく使う感覚、自然なグリップやグリッププレッシャーが身につく
- フェース面を思い通りに操るためには、テニスラケットの素振り
- ドローやフェードの打ち分け
- フェースの開閉を抑えたコントロールショット
打点の安定
- いつも芯に当てることを目標に練習する
- 「芯に当てる努力をして作り上げたものがいいスイング」
- 「いいスイングをすれば芯に当たる」のではない
- インパクトシールで、打点のズレの傾向を把握
- 考えないで振る練習:すぐ打つこと、リズムを合わせて打つこと
- 左右の打点のズレ
- 「芯で打とう」と意識する
- ボールと身体との距離を変える
- ヘッドをセットする位置を、ヒール寄り、トゥ寄りに変える
- 擦るマットの位置が安定するまで、素振りを繰り返す
- 「芯に当てる」調整力を磨くために
- わざと空振りする:ボールの手前や向こう側
- わざと先っぽに当てたり、ネックに当てたりする
- 上下の打点のズレ
- 最下点がボールより手前:
- 右足体重、ボール位置が左過ぎる
- 最下点がボールより先:
- 左足体重が強過ぎる、ボール位置が右過ぎる
- すべての番手で同じ位置が擦れるように素振り
- 最下点がボールより手前:
- ドライバーの打点のズレ
- テンプラ
- ヒール寄りの当たり → ボールに近すぎる
- トップ
- トゥ寄りの当たり → ボールから遠い
- 打点が上にズレやすい
- ヘッドが上から入っている → 体が左に突っ込んでいる
- 打点が下にズレやすい
- ヘッドが下から入っている → 体重が右に残り過ぎている
- テンプラ
- 「打点を安定させる」調整力を磨くために
- 重いものを振る:700-800g のマスコットバット
- 1日5分、右に30回、左に30回
アプローチ
- スコアメイクの鍵はアプローチとパット
- 一つの技術しか使えないより、さまざまな打ち分けを経験し身につけた人の方が、上達のスピードが速く、頂点が高くなる。
- アプローチは「勘」を磨くこと。それにはめちゃくちゃたくさんボールを打つこと。
- 30分で30ヤード以内を150球。何も考えず「ただ打て。とにかく打て」
- 人は無意識に調整する。その中で「勘」が磨かれる。
30ヤード以内
- 基本のピッチ&ラン
- キャリー:ラン=5:5
- 距離感は振り幅ではなくクラブスピードで調整
- ボールに近づき、ハンドアップで構える、少しウィークグリップ
- 切り返しでうっすらできた左手のヒンジの動きを感じ取り、それをキープしたままインパクト
- ヘッドとボールのスピードを一致させると、球の高さも揃う
- それより低いピッチ&ラン
- 高い球のアプローチ
- フェースを開きハンドダウンに構える。両膝を曲げ重心を落とす
- ボールの位置は左
- フェースを開く分、左に向く
- テークバックの始めから左親指方向にコック
- ダルマ落としの要領で、ヘッドをボールの下にくぐらせる
- 体を回したり重心移動させたりする動きはない
40-70ヤード
- 30ヤード以上はコックを使う
- 距離感は「振り幅+勘」
- 「ひざからひざ」「腰から腰」「肩から肩」で基準を作る。あとはその微調整。
- 「胸から胸」「耳から耳」もあり。体の上の方で基準を作る。
パッティング
- ボールは左目の下、それより 1-2個分遠いか左にあるのはOK
- 左肘からパターが一直線。手首を使わないため。
- バックスイング 1:フォロースイング 2
- 自然とアッパー軌道となり、転がりがよくなる
- ショートパット(3m 以内)
- ミドルパット(3 - 10m)
- ロングパット(10m 以上)
- 部屋の中で「強く打つ」練習。座布団やクッションめがけて、10m 以上をイメージして打つ。
- パットの上手い人の転がりを見る。
- ピッタリに寄るスピード、転がりのイメージを養うには、見た経験を増やすこと
打たれ強いメンタル
- 「1打の価値はすべて同じではない」
- 精神的に揺さぶられた状況にいくつも出合う。より1打に集中すべき場面がある。
- 「自分の心は揺さぶられている」ことを自覚し、フラットな気持ちで打てるよう、次の一打に集中する
- プロのスコアメイクの5ヶ条を、アマチュア用に置き換える:「ボギー」→「ダボ」、「パー5」→「パー3」
- スタートホールでダボを打たない
- 9番と18番でダボを打たない
- パー3 でダボを打たない
- パーやバーディのあとにダボを打たない
- ダボのあとにダボを打たない
- 自分がどんな場面に弱いのか、自分の弱点を知る
- OB などのミスのあとにミスを重ねる
- スタートホールで失敗すると立ち直れないなど
- いいスコアが見えている時の最終ホールは要注意
- 実力よりちょっと高い目標を立てる
- パー3 のためにティーアップして練習しておく
- 苦手な状況を想定して練習する
- 狙ったところより右に打たない、左に打たない
- 難しいコースに行くと、普段のコースが易しく感じられる
- 脳の指令と体の反応を一致させる
- パッティングであれば打つ前の素振りでイメージをしっかり作り、そのイメージ通りにストロークする
- そのために「打った瞬間、結果を宣言する」練習