大規模ソーシャルサービスである Twitter(ツイッター)が、いよいよ恒久的なマネタイズに向けて広告モデルを発表した。生態系(エコシステム)構築に向けて、さまざまなパートナーを巻き込む必要のある Twitter ではあるが、収益モデル確立をめざした最近の活動は、さまざまな論議を呼んでいる。The Economist の記事 "Up for promotion (Twitter decides to sell advertising)" (April 17th 2010) の要旨を下にまとめておく。
- 創業以来3年間、Twitter(1億6百万ユーザ、100,000 アプリ)には、マネタイズできるのかという疑問があったが、いよいよ広告スキームを発表した。
- 広告モデル("promoted tweets"):
- まずはスターバックスやヴァージンのような大手クライアントのつぶやきを、"promoted tweets" として、検索結果のトップに置く。Google の検索キーワード広告と似たものである。
- この "promoted tweets" に対して返答や転送がなされるか。そういうテストを行って、不評であればやめる。
- うまく行ったら次のフェーズで、"promoted tweets" をサード・パーティのアプリケーションまで拡大、個人のつぶやきの隣に "promoted tweets" を掲載する。これについては、既にユーザから抗議の声が上がっているが、大きな抵抗がなければそう進むだろう。
- Twitter は購買行動に結びつかないので、Google と比べると広告主にとって評価されにくいという懐疑論がある。それに対して、Twitter 側は製品発表に対する反応をすぐに知りたいという利用者がいるのだ、と反駁している。
- 広告以外の収益モデル:
- Google と Microsoft の Bing に対して、検索結果に tweet を一緒に並べる取引を結んでいる。
- またデータ分析製品を、商品がツイッター世界(Twittersphere)でどう評価されているかを知りたい会社に提供している。
- これらの一部は、Twitter の開発者と競合してきている。Twitter が tweetie のメーカーである Atebits を買収した時には、同様のソフトウェア・メーカーから不満が上がった。しかし計算機の歴史の中で、小さな会社が作った機能を Microsoft や Apple のような会社が自社の機能として追加してきたのはよくあることだ。
- Twitter はより慎重になって、他の開発者の恐怖を最小にするようにしているし、また広告プラットフォームをアプリケーションに拡張した際には、開発者への収益シェアを大きくするようなこともあり得るだろう。
- 上記は Twitter が力のある生態系を構築するために重要なことだ。なぜならライバルである Facebook がその生態系拡大のために、他のウェブサイトとのデータのやりとりをさらに容易にしようとしているからだ。この恐るべき敵と戦うために、Twitter は友人 --- そして広告主 --- を必要としている。
この記事にあるように、収益モデル確立と、生態系構築とを両立できるかが最重要課題である。Apple が音楽で、Amazon が電子書籍で、Google が情報検索で作り上げてきた生態系を、Facebook や Twitter がソーシャルサービスの中で構築できるか。生態系のプラットフォームとしての魅力はありあまるほど持っている彼らの次の一手が、パートナーと競合するのか、協調するものなのか。慎重な検討がなされ、修正を加えながら進められていくものと思う。