昨年末に UUUM を退所した中井学プロが、今年から YouTube「中井学ゴルフチャンネル」を始めて、怒涛の勢いで動画をアップしている。相棒はプロテスト合格をめざす伊藤奨吾選手。この二人のスイングを見る眼や、技術論のレベルが高い。中井学プロの話に対して、伊藤選手が的確な質問をして、話の内容を補足するレッスン動画となっており、更新されるのが楽しみなチャンネルである。
このチャンネルの最初のレッスン動画として、中井学プロが取り上げたのは、次の 5つのキーワードである。
- シャローイング
- 地面反力
- 掌屈
- ボディーターン、アームローテーション
- ハンドファースト
ゴルフを学ぶ上で重要であり、かつ巷の YouTube ゴルフレッスンで流行っているキーワードでもある。これらのキーワードに対して「正しい理解をして欲しい(さもないと自分のスイングを壊してしまう)」と、熱く語っている。
シャローイング
- 今のクラブは低重心になっているので、アイアンを打ち込み過ぎる必要はなくなった。
- 日本では軸を重視するが、米国のレッスンではプレーン(シャフトの軌道)とクラブパス(クラブの軌道)を重視する。
- プレーンとは、一番効率よくクラブの力をボールに伝えられる通り道である。
- シャローイングは、プレーンに戻すこと。目指すものではなく、結果的にそうなるもの。
- シャローイングは、一番効率のよい軌道であるが、次の人には合わない:
- 前傾が最重要項目の一つ。胸をボール側・地面側に向けるよう、キープすることが大事。
- 自分に何が必要なのか。その目指すポイントがないのに、シャローイングはしてはいけない。単なる流行りでやろうとしても、スイングを壊してしまう。
【レッスン】YouTubeレッスンを嫌いにならないでください!【シャローイング】
地面反力
- 地面反力は誰もがやっており、スイングの正解の一つ。
- 日本には左右の体重移動という概念があり、そのイメージを持つと、地面反力は使いにくい。
- 地面反力は上下の動き。正拳突きと言われるが、下半身・下肢の動きである。
- 本質的には、地面反力は「ブランコの立ち漕ぎ」の動きである。膝の曲げ伸ばしの動きで、クラブを加速する。
- 飛距離を求めるというより、まずはクラブを加速させるための「タイミングを整える」と言う時に、地面反力の概念を使うのが有効。
- まずはトライしてみて欲しい。自分のイメージに合わなかったら採用しなくてよい。
【レッスン】YouTubeレッスンを嫌いにならないでください!【地面反力】
掌屈
- 米国PGAツアーの DJ やケプカは、トップで左手が掌屈(bowed wrist)する。ベン・ホーガンもそう。フラットな軌道で掌屈したインパクトにより、オンプレーンという概念を広めた。
- 一方、日本はジャック・ニクラウスを手本にしたので、アップライトなスイングが理想とされていた。
- 今のクラブ、重心距離が長く軽いクラブには、オンプレーンスイングが合っている。
- 左手の掌屈が難しいのは、まず利き腕でないことがある。→ 右手のヒンジコックと考えたらどうだろうか。
- トップの位置の右手に注目。右手が上を向いている時に、実はフェースは閉じている。
- つまり右手の「ヒンジコック」により、フェースが閉じる → 球がつかまる。これが左手の「掌屈」に相当する。
- 構えたら右手のヒンジコックを入れ、腰を右に入れる。その状態から打つと球がつかまる。
- 自分で手を返して、球をつかまえる必要はない。結果的に、体のターンでボールが捉えられる。
- 体のターンで球をつかまえるために、ダウンスイングで左手の掌屈、あるいは右手のヒンジコックを使うとよい。
- 逆にハンドアクションで、球をつかまえるプレーヤーもいる。ウェブ・シンプソンなどは、掌屈しない。
【レッスン】YouTubeレッスンを嫌いにならないでください!【掌屈】
アームローテーション、ボディーローテーション
- ゴルフスイングは、アームローテーションとボディーローテションのコンビネーション。
- アームローテーションの度合いが大きいか、ボディーローテションの度合いが大きいか。この割合の違いで、スイングの個性になる。
- アームローテーションの多い人:
- ヘッドが追い越していくために、カウンター動作が必要。
- 左サイドに壁を作って、ヘッドを走らせる。
- 腕を速く振ろうとすると、足元が止まる。それがカウンター。
- 手とクラブが先行しなければならないのが、アームローテーション。
- ボディーローテーションが多い人:
- 中井学プロ自身は、米国に渡って、アームローテーションからボディーローテーションへスイングを変えた。ドライバー以外のクラブで全然飛距離が出なかった。
- ボディーローテーションは、腰を使って、手元とクラブは体の正面に固定しているイメージで振る。
- その際に、カウンターは無意識に出来ている。腰を思い切り回す。その時、勝手に止まる部分がある。
- 手とクラブが一番最後に遅れてこないといけないのが、ボディーローテション。
- アームローテーションと、ボディーローテーションで「正面」の概念が違う。
- ボディーローテションの正面は、腕とクラブは常に体の前。体の面がまわるので、常に腕とクラブは体の正面にあることになる。
- アームローテーションは、飛球線に対して正面。
- この二つの融合をしようとすると苦労する。ボディーローテーションの多い人は、アームローテションのレッスンを見ても合わない。逆も真。
- ボディーローテションができている人には、「もっとキャストしなさい」「右足の前でインパクトしなさい」というアームローテション向けの教えは合わない。
- 手元を走らせると、支点はグリップエンド。体を回すと、支点は背中の後ろ。
- ボディーローテションの方が、遠心力が大きい。
- 中井学プロは、ボディーローテーションを使った方が、体をコンパクトに使って遠心力が有効に使えるので、ボディーローテーション推進派。
- しかしアームローテションが多く、それでスイングを作っている伊藤奨吾選手に、わざわざスイング改造を勧めることはしない。
【レッスン】中井プロが一番言いたかったのはコレ!!ゴルフレッスン界最大の難所を徹底解説!
ハンドファースト
今までの4回のレッスンの総集編に相当する重要な概念がハンドファースト。
- バンカーショット以外は、ハンドファーストで打つと言われる。
- ボールをクリーンにヒットするために、アイアンではハンドファーストが必要。
- ドライバーはロフトが少なく、ハンドファーストの度合いは軽い。遠心力が大きい分、リリースも早く、急激なハンドファーストの角度はつかない。
- スイングの最下点の前にインパクトがあるのがアイアン、最下点の後にインパクトするのがドライバー。その差がハンドファーストの度合いの違いになる。
- 最下点は球筋による。基本は中心。ドローに打つと最下点は右に移り、フェードを打つ時は最下点は左に移る。ボールの位置は、自分の打ちたい球によって決まることが大前提。
- ハンドファーストは「レイトヒット」である。体の回転が伴って、つまり腰を切って、一番最後にクラブが戻ってくる状態がレイトヒットである。これは「振り遅れ」ではない。
- 「振り遅れ」という状態は存在しない。ヘッドのフェースのターン遅れはあるが、振り遅れはない。
- 飛球線方向に押す時に一番力が出せる状態が、腰を切ること。上体ではなく下半身が鍵。これくらい腰を切らないと、ボールを押せないことがわかる。
【レッスン】ハンドファーストで打てない理由はコレだ!中井プロがゴルフ界一番の謎に挑む!!
スイングに正解はない。人それぞれに適したスイングがある。「今、最も効率がよい」と言われるスイング理論はあるかもしれないが、個別にその人に合ったスイングがあるはずで、「このスイング理論しかない」ということはない。「自分に合ったものを見つけることを助ける。それがコーチの仕事だ」と、中井学プロは熱弁を奮っている。
その人にあったスイングを教えるのがコーチの仕事ではあるものの、この 5つのレッスン動画でわかるのは、中井学プロの基本となる考え・価値観は、ボディーターンであることが見てとれる:
- ボディーローテーションによるスイングが望ましい。
- その時にボールをつかまえるのが、左手の掌屈、もしくは右手のヒンジである。
- 下半身で腰を切った時に、一番最後にクラブが戻ってくる。これがハンドファーストのインパクトである。
確かにボディーターンのスイングは、教えがシンプルになる。
それに対して、三觜喜一プロや森守洋プロは、どちらかというとアームローテーション、あるいは上半身の動きから、スイングを教えている。芹澤信雄プロや桑田泉プロもそうだ。腕が振れるようになって初めて、ボディーターンを教える。手首と背中を支点とする「二重振り子」のスイングと言うことでは、アームローテーションとボディーターンの融合系と言えるのかもしれない。
一方、中井学プロは昔からボディーターン(ヒップターン)一辺倒であった。米国に行って、アームローテーションによる飛距離の限界を知ったからだろう。
- 作者:中井 学
- 発売日: 2014/05/02
- メディア: 単行本
ところが 2017年の『誰もいわなかったシンプルゴルフのすすめ』という本では、腕が振れないアマチュアには、まずアームローテーションから教えていくと、宗旨替えしている。レッスンを受ける生徒には、その人に合ったやり方で、その人に合ったスイングを教えていく方針に変えたということなのだろう。
最新の YouTube 動画によると、中井学プロ自身が弟子に手本を見せたい、ということで、シニアツアーをめざす挑戦をするらしい(48歳だから 2年後ということか)。堀尾研仁プロについて、アドバイスを受けていくようだ。その過程もこの YouTube チャンネルで配信していくようで、ますます楽しみになってきた。
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